iPhoneのUSB充電の基礎知識

USB2.0のケーブルは、VCC(5V), D+, D-, GNDの4ラインが存在し、
V(電源)ラインの電流を増やしてもらうために
D(データ)ラインでUSBコントローラと通信する必要がある。
これがUSB2.0の基本仕様。
初めはサスペンド状態の2.5mAか、最低の100mAしか供給してもらえない。
ここでHDDなど大電流を使用する機器は、データラインで「お願い」して
供給電流を500mAに上げてもらうのだ。

ところで、Vラインには2.5mA/100mA/500mAの電流を流せるが
それ以上、1.5Aまでの電流を流すこともできる。

これは時代の流れというべきか、
USBを便利な安定化電源として使用する機器が増えたため
更なる大電流を要する場面が多数生まれたためだ。
例えば、携帯電話や携帯音楽機器などのガジェットの充電がそれにあたる。

その場合は、BC1.2の規格・仕様を満たさなければならない。
BC1.2とは、Battery Charging Specification Revision 1.2の略で
USBで充電するための追加仕様であり、USBの各電源仕様をまとめている。

標準の電源仕様では、DCP/CDP/SDPの3つがある。

SDP:スタンダード ダウンストリーム ポート
   500mAまでのアクティブUSB2.0データ通信
   D+とD-をそれぞれGNDに24.8kΩ以下で繋ぐと500mAまで流せる。

CDP:チャージング ダウンストリーム ポート
   1.5AまでのアクティブUSB2.0データ通信
   SDPに加えて論理回路を追加すると、1.5Aまで流せる。

DCP:デディケイテッ ドチャージング ポート
   通信の無い1.5AまでのACアダプタエミュレーション
   D+とD-を200Ωで短絡すると1.5Aまで流せる。

よくスマートフォン向けに売っている格安AC-USBアダプタは
Vラインのみ出力しているか、DCPをサポートしている。
「急速充電アダプタ」なんて呼ばれているアレは、
データラインが抵抗で短絡されているだけ。ぼろ儲けだ。

なお、iPhoneの場合は、SDP/DCPでも通常充電できるが、
高速充電をする場合は、TI曰く「デバイダーモード」という独自の分電圧方式をとる。
Vラインはもちろんのこと、D+とD-にも2.5Vを印加しないと充電されない。
これをエミュレーションできる電源チップを搭載している質の良いACアダプタか
VCCとGNDの間に10kΩ抵抗を2本挟み分圧してDラインに印加したアダプタでないと
許容電流が大きくても「高速充電」はできない。

なんでこんな方式なのかは不明だがiPod時代からそうらしいから仕方ない。
昔は質の悪いACアダプタが多かったし。
結局のところ、iPhoneやiPadを充電するのに一番速いのは付属ACアダプタだ。
許容電流も1Portしか無いのに1.5Aと申し分ない。