ジブリの映画作品、コクリコ坂からを観た。
新宿のピカデリーで、オンライン予約したため、
混雑も無くすんなり観ることができた。
ジブリは今、新しい監督や若いスタッフが四苦八苦して
次代のジブリのために頑張っている。
(いきなり宮崎駿がいなくなったらジブリは大変なことになる)
「コクリコ坂から」も、そんな頑張りで作られた挑戦的な作品である。
この作品は、1960年代の横浜を舞台にしている。
コクリコ荘という女性向けの民宿に住み、
家事全般を行う少女、ウミが主人公である。
彼女が通う、港南高校にある学生会館「カルチェラタン」が
取り壊され建て替えられる話が持ち上がり、
その存続を巡って沢山の生徒が動き回る物語だ。
海のある横浜らしく、初っぱなから信号旗が登場するが、旗の意味はともかく
「信号旗」すら知らない視聴者が多いのではないかと思った。
もっとも、これはポニョのモールス信号でも同じであるが
こういうコアな小道具を持ち出すのは最近のジブリらしい。
小道具で言えば、時代を反映したものも多数登場する。
マッチで火を付けるガスコンロ、釜、タバコ、ガリ版、黒電話などなど
また、一つ一つの瞬間の表現にこだわりが感じられ、
背景や時間の経過を表す空気感、下町の雰囲気、汚れや臭いなどが写実的。リアルだ。
中でも料理中のシーンは、絵と共に音が生々しく、おなかがすいてしまった。
ジブリは、生活の中の小さな一瞬や感情を生々しく大げさに描くことが多い。
例えば、笑う、怒る、しょげる、食べる、寝る である。
この作品も例に漏れず、堪能できた。
作品全体に渡って非常に文学的であり、どこかカタく理屈っぽい雰囲気がある。
情景がありありと浮かぶ小説の、文字を殺さずに映像作品化したとでも言おうか。
しかし、この作品はまさにそれが味なのだろう。
登場キャラクターはアニメらしく無茶なことをするし、
耳をすませばのように、場面転換に抑揚があり、スピード感もある。
危ない自転車の乗り方で、映像から怖さを感じる一瞬すらある。
カルチェラタンの内部も一見の価値ありだ。
ジブリ作品で好んで使われる、摩天楼の内部吹き抜けがここでも使われている。
もちろん、それだけでは語り尽くせない魅力が描き上げられているのだが。
映像作品としての感想は上記の通りだが
見所はそれだけではなく、やはり主人公と周りの生徒の人間関係や
各々が持つ秘密や、性格(キャラクター付け)だろう。
一人一人の未来を感じさせるエンディングに、
「アリエッティ」の時の「あ、もう終わっちゃった」という感じは最早無かった。
ポニョと同じくらいの満足感と、耳をすませばに通じる趣のある爽やかさを得られた。