株価と実体経済

金融経済と実体経済は違う。
株価など金融経済の景気が良くても、物やサービスの需給が増えて給与や生活が豊かになるわけではない。よく株価は景気の先行指標なんて言うけど、そういう風に思える時もあれば、そうではない時もある。

最近だと、日米の株価指標はコロナ禍での爆下げからだいぶ回復しており、殆ど昨年レベルまで戻ってしまった。ステイホームで経済活動は後退、キャッシュフローの悪い中小企業は倒産しまくり、何万人も失業者が出ているのに、だ。

ヤフコメなど見ると「株価は現実を現していない、仮想的なマネーゲームだ」なんて言ってる人がいる。確かに瞬間的にはそう見えなくもない。

ただ、長年株をやってる経験から言うと、今回はそんなに変な値動きではない。会社と従業員の利害関係は一致しないからだ。例えば、会社が事業整理で社員を大量解雇したりすると株価は上がるのだ。無駄な人件費は会社と株主にとってリスクでしかない。

株主にとって大切なのは、株価と配当だ。会社の存続のためなら、失業者や社員の生活などどうでも良い。事業が止まってしまうストライキは困るが、そうならない程度に給与を少なくつまりコストを抑え、利益を最大化できる経営陣は、株主から良い評価をもらえるのである。

リーマンショックの後で入社してきた20代の若者たちに「今後、生活や働き方に、大きな変化はあると思いますか」と問うと「現状が続くと思う」という人が多数だった。意見を聞けば、変化はできるだけ起きてほしくないのだという。もちろん一定の年齢の人ならば、生き方を変えなければならないような変化は否応なしにやってくるのだから、抗わず適応するものだと分かっている。今回、客先から契約を切られたり住む場所が変わったり、休業で給与が大幅に減った人もおり、日々大切にしていたルーティンや将来の見積もりなど簡単に崩れてしまうのだと分かったはずだ。いいクスリになったのではないか。「安定」は与えてもらうものではない。修行である。

また金融経済でも、資金に余裕を持たせてきちんと買い続けた人は儲かったし、自転車操業のような運用をしていた人は損切りして大損をこいた。リスクヘッジのスタイルが結果に出たはずだ。

日経平均などの株価指数はGDPに紐付いた動きをするため、上がること自体は悪いことではない。それくらい日本の経済にポテンシャルがあると、国内外の投資家から定性的定量的に見られているということだ。