これまた先週のニュースネタ。
moraは、音楽配信サービスとして国内最古参である。
ネットワークウォークマン登場時(2000年)から存在し、
音声圧縮方式ATRAC3をここまで長生きさせた。
ATRAC3の音質はあまり良くないと言われているが
SONY製品で使う上ではむしろ使い勝手の良いものであり
だからこそmoraで採用され続けていた。
しかも実際の音はMP3の128kbpsと比較すれば悪いものではなく
音にこだわりのある人はそもそも圧縮音源を嫌うため
音を気にしないmoraのターゲット層には問題にならなかった。
逆に、再生機たるウォークマンの音質向上機能が異常発達するという
なんともマゾな進化を辿ることとなった。
「初めからATRAC3ではなくもっといい方式採用しろよ」
そんな声はいつもいつまでも聞こえていたが、
再生機側を後から変更できない以上、簡単には変えられない。
AppleのiPodがヒット、iTunesStoreがヒットしてくると
moraはSONY製品専用サービスからApple製品以外の「受け皿」となった。
Androidスマホや、ガラケーの音楽配信はmoraで曲を買う。
そんなエコシステムが回り始めると、困るのはAppleである。
恐らくは世界中で似たような状況になってきたのだろう
iTunesPlus+と呼ばれたDRM廃止フォーマットをデフォルトにしたのである。
DRMを無くせば再生機器を選ばないからだ。
今回、moraもその流れに乗った。
一見危険な賭けであるが、iPod/iPhone使用者を客にすれば
大きな利益を生む市場だと判断したのだろう。
だからこそ、ATRAC3まで捨てると決めたに違いない。
ATRAC3の再生機器は意外と多い。
しかしそれはSONYが長年採用し続け、再生機が作られてきたからであり
結局は一社の独善的な音楽圧縮方式に他ならず、
翻って再生機器の幅ひいては客層を広げる事になると、音質が問題となる。
そうすると、今一番対応機器が多いのはMP3かAACとなるが
iTunesStoreでも採用しているAACで勝負することにしたと見える。
AACはMP3と大きく音質の違いはないが、より新しいため圧縮効率が高く、
視聴覚上の音質がよい。つまり耳障りが良いと言われる。
原音の再現性ばかりが問われてきた圧縮方式の世界で、
耳障りを語るレベルに達していることは面白い。
また、デジタルテレビ放送や映画、Blu-rayでも採用されているため
SONYが推進しているPS3をハブとしたAV家電の連携を考えると
どの機器でも再生できる最大公約数フォーマットがAACなのかもしれない。
いずれにせよ消費者としては歓迎すべき事だ。
iTunesStoreに提供していないレーベルを聞きたければ、CDを買いに行く必要があった。
私のように、これと言って愛するバンド/ユニット/レーベルが無い人は
「衝動的に」「聞きたい」曲だけを買うので、ポチっと買ってサッと聞けた方が有難い。
アーティストには失礼かもしれないが皆似たようなものだろう。
買いに行くぐらいなら、買わなくていいやとあきらめてしまう。
(同じことは映画やドラマの配信サービスにも言えるFuluに期待)