労働力が過剰

昨今の派遣切りだが、自己責任で済ますにはちょっと酷かもしれない。
平成20年末の全国平均で有効求人倍率は0.75を割っている。
つまり4人に1人はどんなにがんばっても仕事に就けない。
これは全国平均なので、もちろん地域差はある。
都市部なら2倍は超えている。

しかし、皆が都市部へ行けるわけがない。
そもそも都市部の方が衣食住を確保するために金が必要なので
都市に行くと逆に死ぬ事になるかもしれない。

登録型の派遣は、仕事に就くためのハードルが正社員に比べると低いが
時間あたりの給与がアルバイトよりも高く設定されているため
就職したくてもできない人の緩衝剤になってきた側面がある。
無論、アルバイトでも高額であれば生活は可能であるが、社会保険や将来性が無い。
それに比べれば派遣は人並みの生活を送れてしまう。
(派遣会社によっては価格競争でそれらも存在せず、本当にアルバイトと変わらない場合もある。
 この状況はもう派遣法の不備としか言いようが無い。優良な会社は登録制でもボーナスが出るが、
 当然ながら他社や客先には秘密にしておくように言われる)

中途採用のハードルとは、若さ/学歴/経験/妥協だ。
それらが無視される新卒採用は、よく「免罪符」などと揶揄される。
最近は、更に最低限あって当たり前の「住所」や「お金」すら無い人がいる。

就職氷河期に新卒内定を取り損ねてフリーターになった人は
フリーターのまま30代後半になってしまっている。
若い人でも本人が望む就職は楽でないのに
年齢からくる賃金の差で、再就職のハードルが高くなっているからだ。

ろくな経験も積めないまま、経験者が前提の中途採用に当たって砕ける。
下手に歳を食うと、何もかも捨てる覚悟は無理。頑固になるから、
そのままダラダラとフリーターの時代を重ね、履歴書が傷ついてしまう。

派遣切りの被害者の中には、
超高学歴で一流企業だったのに、這い上がれなくなった人もいるだろう。
雇用口があっても、本人の想定する職種との乖離が激しい現実もある。
過去10年間、先端技術を扱う事務をしていた人が、
いきなり飲み屋の下働きをやる気になるだろうか。
若ければ若い人ほど、将来の市場価値を心配するはずだ。
歳をとればとるほど、頑固になり過去のキャリアを活かしたいはずだ。

社会でうまくやっていける人というのは、仕事ができるかどうかではなく
悪くいえばずる賢い、つまり要領が良い人かどうか、
ひょうひょうと何でも受け入れられるかではないだろうか。

自分ができない事を他人にやらせたりするのも実力のうち。
真っ直ぐにしか物事を見れない人は損をする一例なのかもしれない。