OLED

国内メーカから有機ELテレビが発売されて久しい。電気屋さんに行けば、大画面で美しい映像が見られる。しかし、それらは全て韓国のLGやサムスンのパネルである。

どのメーカもパネルが同じだから、画像処理による調整で差をつけようと頑張っている。パネル製造元のLGのテレビより、日本メーカーのテレビの方が画質が良いのは調整の賜物だろう。

ところで、今売られている有機ELパネルは、(悪い言い方をすれば)妥協の産物だということをご存じだろうか。映し出されている映像は色鮮やかだが、実はドットは白く発光しているだけであり、RGBの3色はカラーフィルタで作っている。発光素材が白の1つだけなので、工程が簡単で安価に製造できるメリットがある。一方でフィルタにより発光量の1/3が失われてしまう。その対処としてRGBにWを加え、明るさを補完している。ドットあたり面積がRGBWの4分割となるので、画質としては微妙なところだ。それでも、普及させたのはスゴいことなのだけど。

元々、有機ELはソニーとパナがずーっと頑張っていた。しかし、素材と寿命の問題を解決できずにやめてしまった。難しい方式のパネルを作ろうとしていたのが仇となったのだ。

ドットのRGBをそれぞれ別の発光素材で作り、カラーフィルタを必要としない純粋な方式。光の損失や面積の無駄がないため、画質向上ののびしろがある。画面に朝日が映れば眩しさを、建物の陰には闇を感じるリアリティがある。ただし、製造が複雑でコストが現実的ではなく、実用化に程遠かった。かつて、ソニーは開発の成果として高級路線の有機ELテレビを作ったが、家庭用はそれで終わってしまった。

だが、今は高くても許される「スマホ」がある。ということで、これらの事業はJOLEDという会社に統合され、印刷技術を用いた製造方式の目途がついたとのことでやっと生産開始された。今後大量生産ができれば、LG製パネルも含めた今後の更なる価格破壊が期待される。

LGらが、日本メーカが匙を投げた有機ELを実用化できたのは、ひとえにスマホのおかげである。液晶や有機ELを研究開発して得られた知見、そこに社運をかけて投資する覚悟の賜物だろう。一方、液晶(とバックライト)もめざましい進化を遂げていたことにお気づきだろうか。開口率、視野角、色再現性、光漏れの低減といった画質面をはじめ、省エネ、価格、不良率などなど、どれをとっても文句ない品質過剰の超品質となっている。10年前、液晶メーカが品質を出せず四苦八苦していたのが嘘のようだ。当時iPhone3Gを並べると個体差で画面の色が全て違っていた。

今後、有機ELパネルのシェアが上がれば、今ほど良質なパネルはもう作れなくなるだろう。バブルの頃の家電が超高品質だったように、実は今、液晶が「買い」なのかもしれない。テレビやディスプレイを買うなら、まだ今後1~2年はちょっといい液晶パネルを使った製品が「お得」だと断言する。

※有機ELに飛びつくのは否定しない。液晶と違う、画の新鮮さは大きい。特に暗い部屋で見る影の表現は液晶にはできない。

どうせ4~5年ほど待てば、世の中は有機ELやmicroLEDだらけになっている。有機ELの問題、焼き付きや寿命の問題も軽減されていればいいな。