東芝の3.5inch HDDを購入検討

東芝と言えばストレージ機器の老舗ではあるが
磁気よりも半導体メモリや光学ドライブに力を入れており
HDDは作っていてもノート用や、特殊用途の小型品のみだった。
例えば、iPodに内蔵された1.8inch HDDなどである。

しかし、今価格ドットコムを覗いてみれば
WD、Seagate、東芝!と3.5inch品で肩を並べている。
これはどういうことだろうか。調べてみた。

10?20年遡ると、HDD業界は今よりもっと賑わっていた。
IBM、Conner、Quantum、Maxtor、Seagate、サムスン。
国内も、富士通、パナソニック、ビクター、エプソンが生産していた。
しかし、90年代後半から、PCの普及と同時にHDDの低価格化を招き、
事業の売却劇が巻き起こっていまのような状態になっている。

HDDは最新技術をフル活用する割に利益が見込めにくいのかもしれない。
90年代、1GB HDDが発売された頃は1台3?5万円はしていたと思うが
今は最新の4TBでも2万円を割り込んでいる。

今、3.5inchのHDDを生産している主要なメーカは
WD、Seagate、東芝、HGST(旧・日立GST)である。
日立GSTはWDの子会社になったので、日立をHに変更してHGSTと改名した。
また、日立GSTの全身はIBMである。

SeagateがサムスンのHDD事業を買収したのを横目に
WDはHGSTを子会社化しようとしたが、WDの寡占化が進むことを危惧した
欧州の公正取引委員会が待ったをかけたらしい。
つまり、代わりに何かの設備を誰かに譲渡しなさいということだった。

東芝は2.5inch以下の小型HDDで業界を先行する会社で、
富士通からHDD事業を取得していた。(東芝ストレージデバイス・タイ)
実はHGSTの件に先だって、それをWDに譲渡しており、
その代わりに、WD側は3.5inch生産設備とノウハウを譲渡したため、
東芝は3.5inchのHDDが作れるようになっていた。

そして今回の件でHGSTの製造設備を東芝に譲渡することになったため
東芝は今、HGSTの設備やノウハウで3.5inch HDDを作っている。

また、HGSTは単体で黒字を出している会社であり、
WDの子会社になってもHGSTブランドのHDDは未だ販売され続けている。
(HGST(IBM)の販売チャネルは非常に大きいので簡単に消せないのかも)

HDDメーカは、各々の会社が血で血を洗う努力の結晶ともいえるような
革新技術の特許を持っており、それがないと大容量化・高速化できない。
HGSTは老舗IBMが前身であり、その英知による高性能がウリだったので
WDとしてはその知的財産が喉から手が出るほど欲しかったのだろう。
この様に、HDD業界はあっちこっちで技術の譲渡と取得を繰り返しており
製品はもちろんだが、知的財産のビジネスも主要な事業なのかもしれない。

WDは10年前は安かろう悪かろうのイメージが付きまとっていたが
今や世界のHDDのリーディングカンパニーになってしまった。

というわけで、HGSTが好きだけど価格が高いと思う人は
東芝の1TBプラッタ品を買うと幸せになれる。
このHDDは、外装やシールにTOSHIBAと書いてあるだけで
パソコンにつないでみれば、型番もメーカ名も完全にHGST製品である。