今のPCは、フロッピーディスクドライブが無い

HGSTがWDに売却される報道を見て、色々思った。

今のPCは、フロッピーディスクドライブが無い。

1998年発売のiMac以降、フロッピーディスクドライブが無い機種が増え
今では搭載機種なし。
ドライブメーカも生産を止めてしまったため手に入り難くなった。

フロッピーディスクは、90年代のPCには無くてはならないもので
ほぼ全ての機種に、当たり前のように装備されていたため
とりあえずフロッピーにデータを入れて渡せば、誰でも使用できた。
後期には、高密度記録方式(2HD)となり、1.44MB/枚の容量があった。

ところが、当時のハードディスクは数百MB?数GBに達しており
フロッピーの容量1.44MBでは足りないシーンが多く見られた。
ハードディスクのデータのバックアップもこの容量では難しい。
そのような中、ハードディスクは非常に高価であったため、
ハードディスク程の性能は無いが、大容量で安価な代替装置のニーズがあり
「リムーバブルディスク」と呼ばれて数々の新種メディアが登場した。
その名の通り、リムーバブル(Removable:取り出せる)が特徴で、
特にフロッピーのように「ランダムアクセス」できることが重要視されていた。
(ランダムアクセス:好きな時に好きな部分をすぐ読み書きすること)
いくつか例を挙げると、ZIP、SuperDisk、SyQuest、Jaz、PD、MO等だ。
それぞれ記録方式や素材が全く違うため、独特の性質/特性があった。
ZIPは高速で使い勝手が非常に良い、MOは遅いが大容量で保存性が高いなど。

結果的に、ZIPは米国、MOは日本でよく普及したが、
後のCD-Rの普及とハードディスクの低価格化に押され徐々に消えていった。
ただし、ZIPとMOは未だ現役で使用者がいる。
また、DVD-Rが登場した際にDVD-RAMという規格が登場し、
ビデオレコーダーによく使われたが、リムーバブルメディアの再来と言われた。

1998年頃、CD-Rが爆発的な普及を見せた。
640MBの容量に対して1枚50円程度と非常に安価。
CD-ROMドライブがあれば読み込めるとあって、
他者とのデータのやり取りや大容量のバックアップにCD-Rが最適であった。
更に音楽の録音やコピーする用途にも使えるため、PCに疎い層にも普及した。
この流れは、より大容量で高速なDVD-Rへシフトしていった。
ただし、近年登場したBD-Rへはシフトしておらず、コケる雰囲気がある。
ハードディスクの低価格化が原因であると言われている。

ところで、2001年頃から
USBポートに直接挿して使うメディアが普及し始めた。USBメモリだ。
半導体のメモリを直接読み書きするためシリコンメディアと呼ばれる。
今では、これがフロッピーディスクの代替メディアになっている。
USBポートは近年の全てのPCに備わっている点が重要で、
最近はCD-ROMドライブすら無い機種もあるため、
一部パッケージソフトウェアでは、USBメモリで売っている。

この話には背景がある。
今ではインターネットが普及しているため
小さなファイルであればネットワークで送受信でき、問題にならない。
しかし、90年代はたった1KB程度のファイルですら
何らかのディスクにコピーして手で渡す必要があった。
今後は更なるネットワークの高速化が進むと予想されるため
そういった用途向けのメディアは消えていくだろう。
(SDカードの様に特殊な用途のメディアのみ残る)

でも、ネットワークにはできないこともある。
押入れを整理した時に出てくる10年前のディスク。
なんとかして読み込んでみると、懐かしいファイルが出るわ出るわ。
さながら、タイムカプセルである。
あと、冷暗所に保管していたはずのCD-Rはデータは欠落していた。
流石に10年以上経つとダメなのもあるみたいだ。

また、過去のメディアを「消える」「消えた」と気軽に書いているが
公官庁や古くからコンピュータを使っている会社では、
重要なデータが古いメディアに収められており、
最新のPCで読み込めないという事態が起こる。
そうならないように、データの容れ物の「移し替え」は大切なことだ。