デジカメはフィルムに画質で劣ると言われる。
CDはレコードに音質で劣ると言われる。
ただし、そのとき必ずと言っていい程、
「保存性」「扱いやすさ」「加工しやすさ」
「高度な信号処理」
については触れられない。
こんな話は昔から存在する。
所謂、デジタルアナログ論争だ。
デジタルと言うと、比較的新しい響きに感じるかもしれないが
全くそういうわけではなく、概念は古くから存在する。
ただ概念はあっても、使うには膨大な処理機の性能が必要で
コストや技術的な理由により実現性が低かった。
だから、昔の機器はなんでもアナログだったのだ。
アナログは、信号の数値化を行わないので「曖昧さ」を残せる。
数値化を行わないので、演算機は要らないし、電子部品である必要も無い。
その代わり、情報の保存に化学変化等の物体の状態を直接用いるため、
環境で変化しやすく保存性に欠ける。
そして、製品の品質が、「出力」に大幅な品質差を生んでいた。
だから音楽機器なら、
コンデンサ、抵抗器、コイルをノイズが少ない高級品にしたり
振動を抑えるだとか、使用中も温度管理を徹底する必要があった。
すると、高級で高価な機器を使っている事自体がステイタスになる。
アナログらしく情報の「変化」を楽しむという趣向も生まれた。
ここまで来ると、手段が目的になっている、なんて言い方をされているが。。
ところが、現代は技術が進歩したため、
非常に高速な信号処理が出来るようになった。
すると、デジタルの概念が実現性をおび、デジタル製品が民生用でも作られた。
大衆は、その手軽さや保たれる品質に目新しさを感じ、普及した。
普及すればコストが落ちて価格も下がる。更に普及に拍車をかけた。
もちろん、その頃のデジタル機器の品質は、
アナログ機器に比べかなり劣るのだが、扱い易さは受け入れられた。
この流れは、ここ10年だと
カセットテープが圧縮音楽のMDになったり、30万画素のデジカメが普及した事からもわかる。
メタルテープの方がMDよりずっと音が良かったし、デジカメの画質でフィルムに勝てるわけがなかったのに、売れた。皆がその目新しさや扱いやすさから購入したわけだ。
今ではMDもデジカメも、当時に比べると飛躍的に品質が向上していて、テープやフィルムとの差が誰にでもわかるものではなくなっている。それどころか、完全に置き換えても問題ないという人すらいる。
今、テープの方が音がいい!とMDをワザワザ話題に上げる人はいない。時間が品質を解決してしまったからだ。
デジタル製品の品質は、最初は粗悪、だんだん向上、規格が変わって一気に向上という流れが多い。
また、音楽機器というより作曲機器も同様である。
現在のシンセサイザーはデジタルで、ソフトウェア音源が普通だ。
登場したばかりの頃はファミコンの様な音ばかりだったが
今売れている楽曲の多くはソフトウェア上で作成されており
非常に自然な音を奏でる事が出来る。
初音ミクなんて、一般的なPC上で歌っちゃってるのだ。
ここまでくると、アナログには不可能な領域と言える。
そう、デジタルの本領は
「アナログでは複雑すぎて事実上できない」
という事をいとも簡単に行える事だ。
アナログ至上主義の人は、そういった点を許せない人だったりする。
それは自然ではないからだ。
デジタル至上主義の人は、アナログを守るのはエゴだという。
しかし、アナログのポテンシャルが高いのは事実で、デジタルの数値化の際に抜け落ちる情報がきちんと生き残っている。CD-Rに焼いたテキストは劣化したら一切読めなくなるが、石版に彫った文字は劣化しても意味がわかる。
デジタル・アナログ論争は、そういった背景を前提に見ていると
誰の意見に何が足りないかが見えてくる。
俺の個人的な意見としては
今後デジタルの処理が更に精細になれば、
デジタル以外には無くなると思っている。
技術は必ず進歩するからだ。