秒速5センチメートル

新海誠の最新作「秒速5センチメートル」を渋谷シネマライズで見てきた。

館内では予告編で何度も聞いた、あのピアノ曲が流れていた。
流れは、主人公が青春を回想しながら成長していく、切ない恋の物語だ。

sakura

-知ってる?桜の花びらの落ちる速度って秒速5センチメートルなんだって。

俺は、映画を見ながら
小学生や中学生の頃を思い出していた。
生暖かい晴れの日。
若草のにおいの風が吹き、満開の桜が咲いていた。
ランドセルを背負い、手提げをぶらぶらさせながら、土曜日昼前の帰り道。
(俺は誰がなんと言おうと午前がすき)
色々な事が、眩しくて、新しくて。
そして、まだ女の子を異性として近づき難くなることの無かった時代。

この作品は、「雲のむこう、約束の場所」よりも「ほしのこえ」に近い。
離れ離れになる男女を描いているからだ。
主人公は、思う事をつらつらと語りつづける。
しかしそれらの作品とは違い、今回はセカイ系のストーリーとは言い難い。
逆に世界に翻弄された結果、二人だけのセカイしか見えなくなったような感じすらある。
俺にとって、今迄で一番現実的な新海誠だった。
過ぎてゆく年月を伝えるための、オブジェクトの時代考証は微妙ではあるが、
季節感を出すための効果はなかなか高かったように思える。
春なら桜、夏なら半そでと眩しさ、秋は虫の音、冬は雪と白く曇る息など、である。

耳をすませばが好きなら、見る価値はあると思う。
EDを言うわけにはいかないが、切なくて泣ける。