こまちのひみつ

私は小さい頃に宇都宮市に住んでいた。
宇都宮には東北新幹線が走っている。

当時の東北新幹線は1982年に開業して数年目であり、
駅のホームも線路も新しく、大宮 – 盛岡間しか開通していなかった。
数年後は首都圏の上野まで、更に数年後に東京まで開通して便利になった。
宇都宮-上野間は、在来線だと時間が掛かるため新幹線が楽だった。
当時の新幹線の指定席券が、判子と手書きで特徴的だったのを覚えている。
また、停車直前の車内放送チャイムが駅毎のご当地メロディだった…ハズ。
昨年(2010年)には、遂に新青森までいけるようになった。
このように、東北新幹線は開業から全線開通まで非常に長い期間がかかった。

さて、大宮では妙な光景が見られる。
東京方面から、秋田新幹線「こまち」がやってくるのである。
「はやて」の先頭に「こまち」が連結された状態である。紛れもなくこまち。
白いボディに黒い窓、グレーと紅色のラインという、美しい姿だ。

ちょっとだけギョッとしてしまった。

…私の記憶が正しければ、こいつは秋田の在来線を走る「こまち」である。
…しかし何故か東京から新幹線ホームにやってきた。
…こまちは、ミニ新幹線なのに、フル規格の東北新幹線の線路を走っている。
…もしかしてミニ新幹線車両はフル規格の線路を走れる???

フル規格は、在来線に比べて線路の幅が広い。
そして秋田新幹線こまちは、E3系のミニ新幹線である。
在来線の特急と同じサイズで作られているから、ミニ新幹線と呼ばれている。
だから線路の幅も、車両の大きさも、新幹線より小さい…ハズである。
その証拠に、いま新幹線のホームに入ってきた「こまち」は、
車両とホームの数十センチの隙間を埋めるために、ドアの下にステップがせり出している。

調べてみたら、「こまち」はフル規格の車輪幅の台車がついていた。
小さいのは車体だけであり、速度はきっちり出せる新幹線なのであった。
んで、秋田の在来線の線路側を改造して、フル規格車両が走れるよう
外側にレール1本増やし、3本のレールを通すことで、両規格に対応しているそうだ。
ただし、こまちの台車の車輪の前後の幅は、通常の新幹線より短いらしい。
たぶん在来線はカーブがきついためだろう。