学資保険

保険というのは、大きく分けて生命保険と損害保険に分かれる。
損保は、自動車保険や傷害保険に加入していたことがあるので大体わかるが、生保は全く分からないので少し勉強することにした。結局、1か月以上かかってしまった。
なお医療保険は、損保と生保のどちらも売っている大人気商品である。保険の世界で一番コスパが悪いので加入には注意が必要だ。

学資保険について生保の営業とも5人くらいと見積もりや話をさせてもらい、保険の種類、現状、法律、法的には問題ないけどビジネス的にやられると困ること、などを勉強させてもらった。

生命保険と呼ばれるものは、次の3つしかない。

  • 定期保険
  • 終身保険
  • 個人年金保険

これらに「期間と額」「払い方と貰い方」に特徴を付けて、あらゆる商品を展開している。定期保険に積立型の「養老保険」と呼ばれる商品があり、これを子供向けに再設計して名前をつけたものが「学資保険」である。

確実に言えるのは、学資保険は客寄せ商品だということ。ビジネスとしては赤字ギリギリの利率設定がされている。

生保各社がネット上で簡単にシミュレーションできるのは学資保険だけである点からしても、事情が窺い知れる。だから学資保険そのものは悪い商品ではない。
加入したければ営業と必ず対面で話をしなければならず、それは保険は個々人の事情で設計最適化しなければならないからだが、その時に「こちらの商品の方が利率がよいですよ」と金をぶんどれる養老保険や変額保険を勧めるのである。
そりゃあ、生命保険は殆ど債券で運用されているので、マイナス金利の今まともな保険商品などありはしない。高利率の学資保険ですら、18年運用で返戻率が110%に届かないのである。平均利回りで言えば年0.5%程度だ。積極的な株式運用で利率を追い求める変額保険の方が、今はどう転んでも利率は良い。

しかし利率が目的なら、つみたてNISAでインデックス運用した方がずっと有利だろう。保険会社に高額な運用手数料をもぎ取られるのは馬鹿馬鹿しいではないか。

何のために学資保険に入るのか。本当に入らないといけないのか。もっといい選択肢はないのか。という事を考えたとき、学資保険の機能、保障に注目することにした。変額保険では、学資保険の役割は果たせないのである。

学資保険の一番の目的は、親が死んでも子の学費は確保されることである。
死んだら金が出る、定期の生命保険だ。

さて、生命保険に加入したら死んだ時にお金は支払われるのは当然であるが、学資保険の場合、最終的に支払う合計金額と保険金があまり変わらない点がイケてない。400万円の学資保険なら、380万円程度を積み立てなければならない。

契約者が死ぬと以後の支払いは免除され、予定通り400万円でるというのが機能である。死ななくても400万円は支払われ好きに使える。

でもちょっと待って欲しい。生命保険は、支払う金額の2倍とかの保険金が出るようでなければ価値が無いのではないか。380万払って、死んだら400万て。満期に400万必ず降りるのだから20万得しただけマシだろうか。実は60歳満期の定期保険でもこんな利率なのである…

なぜこのような価値のない設計になっているかというと、日銀と政府のマイナス金利政策によるものだ。結果的に、利息が期待できず価格が高くなってしまった積立型より、Sが大きい掛捨て型の方に力を入れて売るようになっている。

実際に保険会社が売っている商品は、掛捨型と貯蓄型を組み合わせて、毎月の保険料を安く見せかけているものが多い。
特に保険の事をよくわからない人が勧められて入るのが・・・

  • 低額な終身保険
  • 低額な貯蓄型定期保険
  • 高額な掛捨型定期保険

の3つの組み合わせタイプ。あらゆる保険商品を全部売りつけられたパターンである。

例えば30歳から加入したら、毎月の保険料1万数千円で、死亡保障5000万です、支払いは60歳でおしまいです、60歳は満期で100万円お祝い金が出ます。60歳以降の死亡保障は200万です。といったものである。

「死んでも5000万でるから家族は安心だし、死ななくても満期のお祝い金で老後に備えられるし、いつか死んだら葬儀費用くらいは出るし、月の支払いが安く抑えられて支払えるね」となりやすい。結局、毎月の保険料を支払い続けられるかどうかで決める人が多い。

でも毎月1万円以上も30年、総額400万以上のお金を払い続けて、長生きしても受け取れるのは300万円というのも如何だろうか。いいカモである。

そもそも今の時代、5000万円も不要じゃなかろうか。家でも買うのか。一家の大黒柱がいなくなったら、次の大黒柱が立ち上がるまでの準備金があれば十分じゃないのか。
1200万円を、10年間、毎月10万ずつもらえるといった方がよほど役に立つだろう。遺族年金と組み合わせれば問題なく生活できる。1000万円程度の掛捨型であれば、月1000円なのだからこれで十分だ。また、この死亡保障は掛捨てなので60歳までしか貰えない。

満期で積立金がおりるにしても、老後資金が必要なら若いうちから確定拠出年金などで2千万円を準備しておくべきである。たった100万円のために30年をかけたことになる。全く増えないので、定期保険の積立はあまり意味がない。

終身の200万円はまあ、あって損はしないだろうと思う。人はいつか死ぬから必ず貰えるし、死んだ時に遺族は何かと助かるはずだ。

商品のSとかPとかCVを考えず、目的と戦略が明確でない状態で生命保険に手を出すと、すぐに保険屋のエジキである。掛捨ては保険会社にとって大変な利益になるため、営業成績もいかに掛捨て商品を売るかにかかっている。

目的は大事だ。例えば終身保険は利率が良く、税金対策としても利用価値の高い保険だ。70歳・80歳と高齢でも、一時払い(一括払い)ならば加入できる。保険金とほぼ同額の保険料を払うことになるが、死んだ時に出る保険金は「みなし相続税」の扱いとなり、受取人の人数×500万円が非課税となる。遺産は保険金でなく現金で受け取るとダイレクトに相続税がかかるため、その対策として大変有用だ。また、早めの60歳あたりから始めれば良い利息が期待できるだろう。

時を戻そう

ここで初心に立ち返りたい。

  • いくら払って、いくら貰えるのか?
  • 払い方、貰い方は?
  • 18年後にどのくらい自由度が残されるか?

で考えた時、なにも学資保険でなくても、他の生命保険でもいいのである。

  • 子供が中学に行く前に無理なく払済保険になる
  • 支払総額は学資保険と同じ
  • 18年の解約返戻金は学資保険と同等以上
  • 契約者が死んだら支払額より多い金が貰える

というのが、学資保険として使える条件になる。
これらより利点があれば、学資保険よりリーズナブルな保険と言える。

実は利率の良い外貨の保険なら、そういう商品もある。

・契約者がいつか死んだら、払込額の2倍近い金が貰える
・払済保険のまま、契約者が死ぬまで運用継続できる
・払済保険の受け取り方は、後から決められる

といった具合だ。