今回は完全に趣味でオートマチックにした。
セイコー5という、日本製だが廉価な時計である。
僕は25の頃まで「時計は正確さが本分」と言っていたのに
今では完全に「時計はアクセ」「スマホでいいじゃん」である。
機械式は、これはもう完全に趣味と自己満足だ。
電気を使わずにゼンマイや振り子でチクチク時を刻む機械式は
今でこそほとんど目にしなくなったが、少し昔まで生活の中にあった。
幼稚園では先生が毎朝、ハト時計を合わせて振り子を動かしていたし
週に一度、テレビの時報で合わせたりしていたものだ。
機械式は頻繁に時刻合わせしなくてはいけない。
クォーツ式は、月差といって1ヶ月で1分程度しかズレないが
機械式はなんと日差、つまり毎日10~30秒、1週間で数分ズレる。
わざわざそんなメンドクサイ腕時計を買ってしまったのだから
僕も物好きということなんだろう。
そういえば、腕時計の歴史は1780年頃からあるそうだ。
当初は懐中時計を腕につけたようなものだったそうだが、
モノとして残っているのは19世紀に作られたものだ。
機械式は小型化と精度向上を目指して世界中に沢山の時計職人が生まれた。
その過程で内部構造や歯車の技術革新が進んだ。
20世紀には振ればゼンマイが巻かれる自動巻きも生まれた。
その後、精度向上のために電気で動く時計の開発も進む。
固有の振動数を持つ音叉を用いて運針する時計などが登場した。
日本にも沢山の時計職人がいて活躍していたそうである。
1970年代にセイコーがクオーツ式腕時計の実用化に成功。
クォーツ式はかつて無い精度で時を刻めるがサイズが大きい問題があり
競技用といった特殊分野向けだった。それを腕時計で実現してしまった。
セイコーは特許を公開し、世界中で開発が進む事になった。
結果、数年で価格が数十万円から数千円まで落ちた。
それまで腕時計は高級品で一部の人しか持つことができなかったのに
従来より遥かに高精度な時計が、子供も持てる道具になった瞬間だった。
するとアメリカの時計産業は全滅。スイスも大打撃をうけた。
特にスイスのメーカーは生き残りをかけて、あえて機械式で挑み
精度向上を目指した高級品か装飾時計で生きる選択をした。
まさに時計の革命。これはクォーツショックと呼ばれた。
当のセイコーも新興国勢に価格で勝てず、今では高級機械式を復活させた。
富士フイルムがデジカメを普及させた結果、写真技師が消えた話に似ている。
革新的な製品が普及すると、それまで必要だった職は不要になる。時代の流れだ
余談だが、学校の教室にある時計は「カタン」と分針が動く。
全教室で同じ時刻を示していることを不思議に思い、調べたことがある。
実はあの時計、表示器(子機)であり、時を刻む機能は持っていない。
壁の中の配線とつながっており、大元の親機から届くパルスで運針している。
その代わり建物の中の時計を全て同時に合わせることができる。
逆進ができないので、時刻合わせの際は全教室でグルグル針が回る。
一度授業中にそうなったことがあって、ちょっとしたホラーだった。